コラム

自然採光と北欧系インテリア

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May 22, 2013
written by S.M

北欧らしさ、という言葉でみなさんは何を思い浮かべますか?
私がかつてスウェーデン・デンマーク・フィンランドの3ヶ国へ一人旅に出掛けたときのこと。漠然と「北欧らしいもの」に憧れていた私が、旅のなかではっきりと輪郭を得たイメージがあります。

それは、「開放的で心休まる光の取り入れかた」です。

北欧の冬は長く、冬至の頃にもなれば午後の3時には日暮れを迎えます。
そのため昔から室内で過ごす時間が長く、暗く寒い冬をどう快適に過ごすかに知恵を働かせてきました。室内で製作することのできる刺繍やカード織りなどの手工芸が発達したのもそういった背景によるものですが、特に素晴らしいのは光と影を美しく切りとる照明のデザインです。

世界的に有名な北欧の照明デザイナーには、デンマークのポール・ヘニングセンが挙げられますが、光を直接的に放つタイプのものではなく幾重ものシェードが光を優しく分散させて、丸みを帯びた光と影を生み出すデザインです。明るくしたいからといって蛍光灯で全体を照らすようなことはありません。光と影を同時に生み出すことによって、心身がリラックスできる空間作りを目指しているのです。

また、北欧において自然光を取り入れるための窓辺は開放的でもあります。
街を歩いていると、絵本のなかに登場するような、カラフルで小ぶりな可愛い家にたくさん出会います。すべてが興味深くて、一軒一軒眺めながら歩いていた私はふと「窓にカーテンをかけていないお家の多い」ことに気が付きました。

日本では高層マンションにでも暮らしていない限りは考えにくいことですが、道路に面した一軒家でもカーテンをかけない家が意外にも多いのです。それもすべて、より多くの自然光を窓から直に取り入れるため。外から見える我が家の窓辺をきれいなガラス瓶や花で彩ることも忘れないところが、インテリアにこだわる北欧の人々らしくて素敵でした。

ちなみに、カーテンもかけないで寒くないのだろうか?と心配になってしまいますが、北欧の多くの家の窓は3重になっており、十分に室内を暖かく保つことができます。

フィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アアルトのアトリエや自邸を見学した際も開放的で大きな窓が明るく印象的でしたが、その多くが3重窓でした。そこには北海道よりもさらに北の緯度に位置する北欧で暮らす、人々の知恵と技術が詰まっています。和紙を照明や窓辺に用いてきた日本と北欧の明かりとの向き合い方、柔らかな視点がとても似ていてなんだか親近感が湧いてきませんか?