コラム

有田焼でお茶を楽しむカフェ

arita
May 17, 2013
written by K.S

私たちの日常生活にゆとりをもたらしてくれるカフェ。
最近で猫カフェやメイド喫茶など、多種多少のカフェ文化が生まれています。

佐賀県有田町の「ギャラリー有田」は、店内の壁に並ぶ約2000客の有田焼(ありたやき)のカップを見渡しながら、くつろぐことのできるカフェ。さらに、その中から好きなカップを選んで、コーヒーや紅茶を楽しむことができます。料理の器もすべて有田焼で、ご当地の食材が使われています。

このように、佐賀は焼き物で食を楽しむ文化があります。佐賀県は有田焼、伊万里焼、唐津焼など世界的に有名な陶磁器の産地。飲食店などで気になる焼き物を見つけると、つい底部分を見てどこの窯元なのか確かめてしまう県民性だとか。佐賀県の約8割の小学校では有田焼を給食に取り入れており、子供たちのために軽くて丈夫な陶器が開発されるほど、焼き物にはこだわりがあります。

そもそも焼き物にはどのような種類があるのでしょうか。

焼き物とは、土を練り固め焼いて作った陶磁器を指します。
地域によって瀬戸物(せともの)、唐津物(からつもの)と呼ばれることもあります。
その中でも土器、せっ器、陶器(土もの)、磁器(石もの)に分かれ有田焼は磁器にあたります。

そんな有田焼のルーツを探ってみましょう。

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佐賀県有田町で日本磁器の製造が始まったのは、17世紀初期の1610年代ごろ。
有田や長崎の町で焼かれた磁器は、伊万里港から積み出されており、江戸時代には別名「伊万里(いまり)」とも呼ばれていました。したがって、当時の有田焼は一般的に古伊万里と言われています。江戸後期に日本各地で磁器の生産が始まるまで、有田は国内で唯一磁器を作り続けていたそうです。

明治以降、輸送手段が船から陸上交通に移り、有田で作られた磁器は「有田焼」、伊万里の磁器は「伊万里焼」と区別されるようになりました。これらは現代においても、世界で有名な磁器のブランドとされています。

有田焼の特徴は、白く透きとおるような乳白色の素地に、繊細かつ華やかに絵付けされているデザイン。1660年代から生産されており、作り手の初代酒井田柿右衛門の名から柿右衛門様式とも呼ばれます。美しいだけでなく、使いやすく耐久性が高いので、一般家庭食器としても人気が高いです。

現在は第十四代酒井田柿右衛門をはじめ、有田の各窯元が長い伝統を守りながら、新しい様式を組み込み、新たな有田焼の歴史を作り出しています。

カフェに並べられているカップを1客1客眺めていると、そんな有田焼の歴史と窯元の個性が感じられ、思わず魅入ってしまいます。長い歴史の中で根付いた焼き物の伝統を、生活の中に取り入れる文化の有田で生まれたカフェ。

最近では「有田焼御膳」なる新しいご当地メニューが登場。
有田産鶏肉を有田焼の器に盛りつけ、目と舌の両方で楽しみながら味わう、新たな試みもなされています。

コーヒーや食事を楽しみながら、お気に入りのカップで有田焼の歴史を感じてみられてはいかがでしょうか。

写真出典:http://www.flickr.com/photos/nagarazoku/65431050/