コラム

地に足がつくということ

chiniashiga
May 22, 2013
written by 福永夕太

僕のオフィスは南青山の手入れが行き届いた古いマンション。
ちなみに昭和45年築。その空気感が好きで入居を決めた。

このマンションの管理人(70歳くらい?)はとても人生経験豊富で、話をしていてとても面白く勉強になる。5階にあるオフィスに到着して、珈琲を淹れ、カップ片手に下に降り、ベンチに座って雑談をする事がよくある。特に洒落たイスやテーブルがあるわけでもなく、小奇麗にしてある白いイスとテーブル、目の前に手入れの届いた植木類と金魚蜂がある。長話をするには最高のロケーションが整っているわけです。

収まりが良いとでも言うのだろうか、そんな空間がとても気に入っている。

僕が何気なく言ってみた。
「いつになったら地に足がついたっていう感覚になるんだろう・・」

管理人は、「地に足がついてるなんて思ってるやつの方がついてないんだよ」
と言った。そして続ける。

「地に足をつけようとしてバタバタしているから浮いてられるんだし、地に足がついているかなんて他人様が勝手に決めればいい」と。

「なるほどね!」って素直に思った。
この不安定な感覚でいいわけだ。疲れても一生バタ足するしかないんだと思った。

tni
管理人は続ける。
「柳はいいよね。あんな生き方が理想。枝のしなやかさ、根の強さ。あれだね。」
「雪が積もっても枝がしなやかに掃うから折れないしね。ピンっと張っていたら重さに耐えられなくて折れる。人も同じだな。」

ちなみに、柳は川にはつきものだったりする。
岡山の倉敷とか風情があるが、あれはあれで理由がある。
端的に言うと、「川岸の地盤強化」のため。
江戸時代はしっかりとした河川工事が出来なかったため、
大雨が降ると川が決壊することが多かった。
そのため、水に強く、細い根が密集している柳の木を植えて
地盤を柳の根で締め付けることで川岸の地盤を強化していた。

雑談ではありますが、要するに細かい根をしっかり張るわけです。

続けてこんなことも話してくれた。
「経験上、生きるにもコツはあると思うよ」

「なになに?」と僕。

「土地と本業にこだわることだな」と管理人。

縦の世代の繋がりを感じた20分間のお茶会だった。