コラム

ルイス バラガン-沈黙の思想家-

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May 25, 2013
written by 中村風詩人

ルイスバラガンは、1902年にメキシコの第二の都市”グアダラハラ”に生まれた。同都市グアダラハラ自由工科大学を卒業しメキシコシティに活動の拠点を移した。

今ではメキシコシティのシンボル的存在になっているサテライトタワーのようなモニュメントから、自宅、ヒラルディ邸、オルテガ邸などの個人宅、さらにはラスアレボレーダスなどの宅地開発までその建築家としての活動を幅広く行ってきた。

1980年には建築家のノーベル賞ともされるプリツカー賞を受賞。2004年にはルイスバラガン邸とその仕事場が世界遺産に登録された。

その作品の数々もさることながら番組”世界遺産”でその人間性をかいま見て何かしら魅力を感じたんだと思う。奇抜な彩色、ヒカリと影が踊る家。窓は一枚の絵のように美しくその空間は静けさがあったように思えた。

彼は一度も自らの建築に”緑”という色を使う事がなかったという。それは自然の緑の色を活かすため。庭園は宇宙との語らいを呼ぶ、そう言っていた。

緑というのは安息をもたらすまさに”自然”の色だ。生涯独身を貫いたルイスバラガン。

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彼のリビングには一枚の皿が飾られている。
その皿には”孤独”と静かに書かれていた。

人は孤独である時にもっとも己の事を考えるのだろう。
彼は建築物が人に与える安らぎは何かを追い求めた。

その行き着いた答えは”静けさ”。

静けさは人間の苦悩を癒してくれる薬であり現代の建築家に与えられた使命は静けさを持つ建築を作る事という。

緑、光、色、影。
自然物で空間を飾る演出家は、そこに静けさを求めていたのだ。
己のための静けさ、人のための静けさを。

「空間の演出とは、静かな音楽を奏でる様なものだ。」

彼がプリツカー賞を受賞した時にこう言っていた。
ルイスバラガン、86年で他界するまで静かに住まう事を追い求めた沈黙の思想家だ。