コラム

建築探偵団

kennchiku
May 18, 2013
written by 四方田裕弘

建築家 藤森照信氏を知ったのは、恥ずかしながらつい最近の事。

ツリーハウスや萱葺きといった一風変わった家が好きなので、『奇想遺産~世界の不思議建築物語』という本で名前だけは知っていた。

きっかけは、確か、荻窪の近衛文麿邸「荻外荘」を杉並区が購入し、公園にするという記事を読んだことだったと思う。

自社サイトで「より道 ちか道 散歩道」や「いいっマンション」を運営しているので、町中をゆっくり歩きまわる機会があり、自然と近代建築にも興味を持つようになった。

興味を持つと、まだ知らなかった建物があらわれると、時間を忘れて調べてしまうのだが、
しかし、そこは生来の集中力のなさで、その建物について深く調べるのではなく、調べている中で出てきた言葉や人物、建物に興味が湧いてしまい、どんどん脇道に逸れていってしまうのだ。

散歩は地図を持たない方がいい。

進む道を決めるのは、その時の気分。

「こっちの道を行くと良さそうな何かがありそうだ」「こっちの道を行くと危険な何かがありそうだ」という風に、「何か」を察知して進む力は自分にはある!と、根拠は全くないながらも、己を信じつつ、歩んでいくのだ。

今回も、荻外荘からすぎなみ学倶楽部を知り、渡邉常太郎についても知った。近衛文麿邸についてネットで検索し、目白の花想容についても知った。

そこからまた、さまざまなサイトや本を行きつ戻りつし、パソコンを前にして、東京都内青山から目黒、六本木、北千住の銭湯まで、あてどなく歩を進めていくうちに、同潤会旧虎ノ門アパートにたどり着き、「東京たてもの伝説」(藤森照信 森まゆみ共著)という一冊の本と出合った次第なのだが、この本、1996年(平成8年)に出版された本で、森まゆみと同潤会アパート(住利共同住宅、旧虎ノ門アパート)や平塚千鶴子邸、旧亀井茲明伯爵邸、安田楠男邸を調査した時の様子について書いてあり、建物内の写真や住んでいる方に聞いた話、建物の歴史や当時の建築家の流行など、とにかく面白い。